相続ノート NOTE

2016.05.01更新

父が生前、「自宅の土地・建物を長男Aに相続させる」との公正証書遺言(遺言①)を作成しました。

しかし、その後、父は「自宅の土地・建物を次男Bに相続させる」との遺言を自筆で作成しました(遺言②)。

さらにその後、今度は「遺言②を撤回する」との公正証書遺言(遺言③)を作成しました。

 

このような場合、どのように考えれば良いのでしょうか?

 

遺言は、遺言者の生存中は、いつでも何度でも、全部又は一部の撤回をすることができます(民法1022条)。

ただし、遺言を撤回するためには、「遺言の方式に従って」行う必要があります(民法1022条)。

例えば、遺言①を作成後、長男Aに対して口頭や手紙で「遺言①を撤回する」と伝えても遺言の方式に従った撤回とは認められません。

遺言②の中に「遺言①は撤回する」と記載されていれば、遺言②が公正証書遺言でなくても撤回が認められます。

 

明記されていなくても、次の3つの類型は撤回したものとみなされます。

① 前後の遺言が内容的に抵触する場合(民法1023条1項)

② 遺言の内容と、その後の生前処分とが抵触する場合(民法1023条2項)

③ 遺言者が故意に遺言書または遺贈目的物を破棄した場合(民法1024条)

したがって、冒頭のケースのように単に「自宅の土地・建物を次男Bに相続させる」と記載された遺言②(遺言①を撤回するとは明記されていない)を作成した場合でも、遺言を撤回したものとみなされます。

 

冒頭のケースでは、さらに「遺言②を撤回する」との遺言③もあります。

遺言③によって遺言②の効力が生じなくなった場合でも、遺言①が復活しないのが原則です(民法1025条本文)。

したがって、父の遺産については遺産分割協議を行う必要があります。

 

では、仮に遺言③において、「遺言②を撤回し、遺言①に従って相続させる」と記載されていた場合はどうでしょうか。

判例(最判平成9年11月13日民集51巻10号4144頁)は同様の事案で遺言者の最終意思を尊重し、「遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が当初の遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、当初の遺言の効力が復活する」と判断しました。

仮に、冒頭の事案で、遺言③において「遺言①に従って相続させる」と明記されていた場合、遺言①に従って相続させることが遺言者の最終意思であると考えられます。

したがって、例外的に遺言①の効力を復活させることになります。

 

このように、遺言が複数ある相続の場合、検討すべき問題が多数あります。

複数の遺言が見つかった場合はできるだけ早めに専門家に相談することをおすすめします。

投稿者: 岸町法律事務所

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