相続ノート NOTE

2016.05.23更新

< 事 案 >

夫が最近、軽度の認知症と診断されました。

夫にはそれなりの資産がありますが、長男と次男の仲が決して良いとは言えません。

夫の死後、長男・次男がもめないように

今から遺言を書くことは可能でしょうか?

 

< 問 題 点 > 

①軽度の認知症の方が書いた遺言は有効か?

⇒軽度の認知症のご主人に遺言を書く能力があるのか?

②遺言能力が否定された場合はどうなるか?

 

< 回 答 ① >

遺言を作成するためには、遺言者に遺言をする能力がなければいけません。

遺言をする能力とは、遺言者が遺言事項を具体的に決定し、その法律効果を理解するのに必要な判断能力(意思能力)をいいます(以下「遺言能力」といいます)。

遺言能力の有無は、一般に、7歳程度の知的判断力が目安とされています。

しかし、行われる行為の種類や内容によって高度のものが要求されることもあります。

 

今回のご相談のような事例で、「妻にすべてを相続させる」との遺言を作成する場合には、内容も単純なものなので、求められる遺言能力もそこまで高度のものにはなりにくいといえます。

他方で、遺言信託を利用するなど複雑な方法を利用する場合などは、比較的高度の遺言能力を求められる可能性が高いです。

今回は軽度の認知症とのことですので、作成した遺言について、事後的に遺言能力がなかったとされる可能性は低いと考えますが、複雑で特殊な内容の遺言を作成する場合には、注意が必要です。

 

< 回 答 ② >

遺言能力が否定されてしまった場合の遺言はどうなるのですか?


遺言能力がない状態で作成された遺言は無効です。

これはどのような遺言の方式をとっても同じです。

遺言がない場合と同じ状態になりますので、法定相続分に応じて相続するか、相続人全員での遺産分割協議をする必要があります。

 

< 対 処 法 >

今回の相談事例では、長男と次男の仲が良くないとのことですので、ご主人の死後に話し合いで解決するのが難しい場合も少なくありません。

したがいまして、揉めることなく相続するには、ご主人の遺言能力を見極めた上で、ご本人が理解できる内容の遺言を作成することが良いと思われます。

遺言者が遺言作成時に遺言能力を有していたか否かは多くの場合事後的な判断になります。

遺言能力が争われても万全な対策を講じておけば、無用な紛争を回避することができます。

早い段階で専門家に相談することをおすすめします。

 

< 参 考 >

遺言能力の有無は、法的評価ですので、争いがある場合は最終的に裁判官が判断します。

公正証書遺言を作成したにもかかわらず、遺言作成当時に遺言能力を有していなかったとされた裁判例は少なくありません。

裁判所が遺言能力の有無を判断するにあたって考慮しているのは、主に以下の事情です。

① 遺言の内容

⇒ 遺言事項が複雑になれば求められる遺言能力も高度になります。

② 病状・認知症の程度

⇒ 認知症が重度になれば遺言能力を否定する事情となります。遺言作成当時のMRI検査等によって脳の器質的変化の有無なども重要な判断資料としています。

③ 遺言をするに至った経緯・時間的関係

⇒ 例えば、消極的だった遺言者に対して第三者が不当な働きかけをして有利な遺言を作成させた場合や、認知症発症からかなり時間が経過して遺言が作成された場合などは、遺言能力を否定する事情になる可能性があります。

 

< 勘 処 >

遺言能力に応じた遺言作成を心がけるべし!

 

重度の認知症の方が契約をする場合の注意点はこちら

遺言がある場合の遺産分割についてはこちら

複数の遺言がある場合についてはこちら

投稿者: 岸町法律事務所

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